管球アンプ四方山話

ロフチン・ホワイトアンプについて  (’03.1.1)

学生時代当時話題であったYAMAHA CA-1000(A級10W)のアンプをはじめは聞いていましたが、どうも納得がいかず、家にRCA2A3があったので下宿で小型の管球アンプを作ろうと思い作ったものですが、自分としては結構長く6、7年使いました。
ご存知のように、1929年にロフチン氏とホワイト氏により考案された回路ですが、電圧増幅段と電力増幅段を直結にした現在で言うDC増幅器の原点のようなものですが、発表された回路では50でした。45でもLUXより発売されたこともあるそうです。
OPTにタンゴU-808、初段に12AX7を1本でダイオード整流でSWでB+を入れるような回路で、結構気に入って聞いていました。就職してから、初段を75、6SQ7、6SQ7GT、整流管に83、オイルコン使用OPTをXE-20Sに換えたりして結構楽しみました。結構ローノイズでハムも気にならず安定していました。
上記のように色々部品を交換しましたが劇的な変化はなかったかと思います。OPTを換えたときは切れはよくなりましたが。
現在の球で安定するかどうかは知りませんが2A3を作るのでしたら一度は作ってみることをお勧めする回路です。2A3にしては澄んだ音が出る回路ではないでしょうか。カップリングにどんなコンデンサーを使おうかと迷うこともないですから。(笑)


送信管アンプについて (’05/8/16)

自作アンプにおいて送信管(多用途管)を最初に使用した例となるとやはり211だと思いますが、業務用の送信管の部類では小型管に入るのではないかと思いますが、1000Vの電圧には躊躇します。845は純粋にオーディオ管だったと思いますが。211のほうが安価で手に入りやすく、またドライブもしやすい為、人気もあったと思います。私は作らずじまいでしたが。
真空管ブーム初期の頃は、良いオーディオ管はいくらでも種類があり、特別使う必要がなかったと思います。実際に211、845以外の記事は見たことがありません。
だんだん、ブームが加熱してくると、良い球が在庫を尽き、球屋、ライターが飽食の時代となるとゲテモノ食いに走ったわけではないと思いますが、必要に追われてテレビの水平、垂直出力管や、今まで市場に出なかった送信管がトランジスター時代になり安く出てくるようになったのが背景にあると思います。
ただ造りは業務用が主でありますので、通信管とは別次元であると思います。
使用方法ですが、初期の頃はカソード・フォロアー・ドライブかトランスドライブが主でした。まだ、グリッド電流の流れるB、C級管ではトランス結合しかありませんがトランスが非常に大型となってしまいます。ダイナミックカップル回路が使えますがドライバーとの関係が1:1となってしまい、自由度がありませんが、はまったときはいいんじゃないかと思います。あとは宍戸氏のイントラ反転回路しかありません。宍戸氏のおかげでかなり眠っていた球が日の目を見たのではないかと思います。
特にRCAの800番台は有名になりました。そのおかげで、また非常に高価になり入手も大変になりました。
ただあまりにも大型化していくような気がします。私のような6畳の部屋で鳴らしている者には関係ない話ですが。
まず、811AやVT104あたりがとっつきはじめにはいいんじゃないかと思います。音の質も良く、まだまだ市場にはありますので。

トランスについて (’03.9.30)

自作管球アンプ用トランスというとまずTANGOトランスが浮かびますが、最初の管球アンプが(30年程前ですが)KT-88PP-UL(100W)の記事でFW-100-5-RというOPTを使いました。PTがMS-380-DRでマッキントッシュのMC-275タイプのもので12BH7Aのカソードフォローのタイプでした。
その後、大学時代に2A3のロフチンにU-808を使用。
その前までは、大型のシングルアンプ用のOPTはなく(また要求もなかった)、管球ブームにより欧米の三極管が入ってきて、最初に対応、時流に乗ったのがTANGOだと思います。
’74年頃のサンスイ(HSシリーズ)LUX(SSシリーズ)などのカタログを見ましても、主流は、PP用のトランス(欧米もそうだったと思いますが、)シングル用はおまけ程度にあります。
その頃の製作記事も新しい球が欧州よりはいってくるとU-808がユニバーサルであるために使われた事が多いと思います。実際私も、TANGOが価格も手ごろで、一番多く使いました。
TAMURAは、佐久間氏のアンプに使われ、本来業務用が主だったものが、一般に使われだしたようです。LUXのOPTは使用経験がないので、書きません。
使った経験から言いますと、TANGOの方が、使いやすさ(穴加工含め)、音色もずっしりしていて好きです。
TAMURAの方はおっとり、しっとりで好みでしょう。ただ昇圧トランスはTAMURAを使っていますが、FRのより芯がしっかりしています。
当たり前ですが、ピアレスやWE、パートリッジのような高級品は使った事がありませんが。
米国のトランスは1度使ってみたいと思いますが。(芯がしっかりしている感じがします)
一般にライターが記事を紹介し、トランスが売れるという事が多いと思いますが、メーカーが提供するのか、相乗りなのか、特注品が多いと思います。ある程度、趣味としている人には、結構作り返してトランスも増えていきます。この辺も、新規需要開拓には、特注品。メーカーの意図も感じられます。
ただTANGOが廃業してしまったことは残念に思います。

カップリングコンについて (’03.9.30)

カップリングコンは、直結アンプ、トランス結合アンプを除きますと、必要不可欠なものですが、手っ取り早く音色の違いを楽しむには、面白いものです。根気があれば、半年ぐらい楽しめます。値段も1K、2K程度のものなので、私も結構、あれこれ交換しました。ブラックビューティーより、ビタミンQ、御手軽にERO、ASC、佐久間氏につられニチケミの汎用オイルコンを見つけてみたり、ウエストキャップが良いと聞けば付け替えたりしました。
LUXのキットにはMPコンや、NTKの汎用のフィルムコンが使われていたと思いますが。
個人的なことから言いますと、ウエストキャップが良かったような気がしますが(WE91Bタイプ)場所、場所(プリかメインか、スペースがあるか)に応じてとにかく試して見る事が一番だと思います。
使わないコンデンサーがたまってきますが、現在ラジオ交換部品として使用(笑)
交換しては、あれこれ言っている時間が一番御手軽で、楽しかったような気がします。
現在はメインは直結アンプ、プリは既製品MC-22(復刻版)であるため、交換する勇気がありませんが。

球について思う事 (’03.10.1)

球を一番買った頃は、S62頃よりH2頃まではよく買いました。通販が、結構多く、上京したときは、F商会などにはよくいきました。無線と実験誌の交換欄でKT-88と45を交換したりしましたが、通販も、当たり外れが結構ありました。特に、新規店は「無線と実験」の広告欄にあっても、値段がいいから大丈夫だろうと思うと、すごい中古品であったり、明らかに、マークを消し、RCAのマークをつけたり、失敗することにより、目が養えましたが。まあ、球専用屋さんと、中古オーディオ機器屋さんの抜き球感覚とは違いますね。生産がありませんから、球屋さんもだんだん質が落ちてきますが。かえって、以前ストックとして買った、一般の人のほうがいい球を持っているのではないでしょうか。
Telefunken、Siemensにしましても、中盤以降はほとんど共産圏の球だと思いますが、結構高値で取引されています。RCAにしても、マークさえあればという感じで取引されてます。まあ買った人が、満足すればいいんですけど。メーカ、ロットによって音色差が有るのは確かだと思うのですが。
五味先生のように何十本のKT-88よりMC-275用のペアーを選ぶなどということは、耳も有りませんし、お金も有りませんが。

トランス結合アンプについて(’05.8.16)

トランス結合とは本来、ロー・ミューのトライオードしかなかった時代、何とか利得を稼ぐために段間に使われたり、スイング電圧が大きい大型管をドライブするためやB級アンプのグリッド電流が流れやすい球のステップダウンに使われるのが主だったと思いますが、特にパワードライブ用の段間トランスは非常に難しく、トランスに電流を流す設計ですとOPTぐらいな大きさになってしまうそうです。特にコアー材で特性の良いといわれる、ニッケル合金コア(WEの物が良いといわれていますが)などは直流を流せないのでCが入る回路となります。
さて、私のしょぼい経験からしますと、WE等の高価なトランスは使用したことなく、TANGO、TAMURAの庶民トランスの使用についてですが。
利点としてはドライバー単管の動作を考えればよい。ドライバー管に小型出力管などが使え、また変えていろいろな音が楽しめる。刺激的な音が出る場合が少ない。なんとなく音がいいイメージがある。出力管にはCR結合より優しいんじゃないかのイメージがある。
経験からですと、増幅度のないトランスほうが音はすっきりする傾向にあると思います。(本来のトランスとは目的が違いますが)
またグリッドーリーク抵抗や、クラーフ結合のCを変えることにより多少音の変化が楽しめます。本質的なところはトランスの質によりますが。
ただ全段すべてにトランスを入れるのもトランス屋の回し者と思えるところもありますが。(腰を痛めないようにしましょう)昔は必要悪(少なくとも音をよくする目的ではない)として使っていたのではないかと思いますが。でも、研究はかなりされていたので、昔のトランスが高価に取引されるのも解りますが。
プリアンプの作成について (’05.8.16)

プリアンプといえば自作はマランツの#7かマッキンのC22でしょう。デザインもすばらしく、オリジナルは聴いた事、見たことはありませんがまだまだ高価に取引されています。私もC22の記念モデルを常用にしていますが中はみすぼらしいものです。でもデザインはすばらしいものです。自作派には真似できないものです。デザインでは、メインは何とかなると思いますが、プリは難しいです。
私個人が始めて作ったプリアンプはS.R.P.Pのアンプですが、この頃は音というよりは、利得、RIAAカーブに対してどうかということが大きなテーマだったと思います。また、メインに比べて面白みがないようですが。ただメインアンプと比べて費用がかからず、良い電源部を作っていけば、工作としては結構遊べます。EQ部も#7タイプ、C22タイプ、QUADタイプ、S.R.P.Pタイプ等いろいろあり、RIAA回路部もCR型、NF型、LCR型と多種です。自作ではCR型が簡単でパーツもいろいろ選定できるため圧倒的に多いと思いますが。
私は初期の頃は、S.R.P.PのCR型で、その後310AのCR型を常用していました。
最後はQUADタイプに興味を持ちましたが頓挫しています。
メインアンプが飽和状態になったときなど、プリアンプ作りで遊ぶのも結構面白いですよ。ただ、ブラックボックスとなりがちなので、デザイン的に如何するかが課題でしょうが。
整流管について (’06/12/30)

整流管というと、まず球は消耗品かどうかということになります。もっとも消耗品ぽい整流管ですらいたわって使いたいものです。球のできた時代のコンデンサー容量は数マイクロ程度であると思います。
整流管の出たところのコンデンサー容量は10マイクロ程度にすべきで、たまに47マイクロの電解コンを入れている回路を見ますとかわいそうだな、消耗品としか見ていないなと感じます。
個人的には5R4GY、83などが好きですが5R4は締まったイメージ、83は太くなりますが刺激的な高域がバランスよくなります。83はあらかじめ余熱を加え、水銀を蒸気化させた後電圧を加えるなど使い方が少々面倒ですが使う価値は十分あると思います。
傍熱管と直熱管との差も直熱管のほうが音が締まる傾向にあると思います。
何台かのアンプを使いまわすと通電時間のあくアンプがあります。その時いきなり電源を入れる時は怖いものでスライダックで徐々にあげてやります。
ただ新管(KT-88やEL-34など)は容量的にダイオードとなっていますが、以前電源を入れたとたん球の上から見ると閃光が走るのを見てぞっとしました。とばした球は今までにKT-88一本だけですが、845シングルに5AR4を4本使った製作記事も以前見たことはありますが、さすがに現在では難しいでしょう。
宍戸式アンプはダイオードですが(容量的に整流管は難しいのか?あまり気にしないのか)811Aはそのまま(ソ連球ですので)800は高圧が少し後にかかるよう回路を入れてあります。
現在では小容量の高圧コンデンサーも少なくなり、まあオイルコンは結構出回っていますのでそれをお使いになったらいいんじゃないかと思います。趣味の世界ですし、いい球も減ってきていますので長生きさせてやりましょう。

アンプの保守について(’06/12/30)

何台もアンプのあった頃は作っては壊し、保守しなければいけない時間もたっていなかったので特別やりませんでしたが、現在ほぼ聴くだけとなっているため、一応予備管は1セット以上持ってはいます。が、現在球より電解コンデンサーのほうが心配です。全部オイルコンなら気が楽なのですが。以前は電圧等を測り記録していましたが、現在はたまにプレートを見るのみです。(赤くなっていないか程度)ほとんど直結なので、バランスが崩れれば音でわかりますから。まあ常識の設計であり定期的に鳴らしていればそう簡単には壊れません。メーカ製のC-22のほうが心配です。他人が作ったものですから。あとは洗浄剤での接点洗浄だけです。