宍戸式アンプについて

個人的に「無線と実験」誌を買いだしたのが90年代ですが、それまでは兄の古い雑誌「魅惑の真空管アンプ」などあったので見ていました。そのMJ誌の何かの記事で送信管808を使ったイントラ反転アンプを使用している人で、「現在のアンプをすべて808にしてしまった」記事を読み「はー」と思っていました。
送信管は211くらいしか知らず1000Vまでは作る気がしませんでした。
以前KT-88で600Vを食らったことがあり怖い。
そんな折、自作アンプコンテストがMJ誌で始まり811を使ったアンプが結構評価が高かったので
一度作りたいなと思っていました。宍戸氏の設計のイントラ反転アンプもありました。
古典アンプも割合に作ったので、何か新しいアンプを作りたかった時でした。
そんな頃RCA800の記事が載りましたがPPで評価もあまりパットしませんでした。
次に45ドライブの800シングルの記事がでて45の音を出すためのRCA800シングルアンプ
うたい文句に作りたいなと思っている時に売買欄にRCA800が出て購入しそのままいっきにトランス注文、作ってしまいました。

1.出会い

2.製作 (45ドライブRCA800)

宍戸氏は鈴蘭堂のSLシリーズのシャーシを使いますが、自分はシャーシから作るので同じ大きさにしました。個人的にはもう少し大きなものとしたかった。(宍戸アンプは全体的に発熱が結構あります。冬はちょうどよいのですが)またSLシャーシは2、3度使ったことがありますがアルミが柔らかい。
宍戸式で特に気になるのは整流管を使わずダイオード整流です。球は大丈夫かな、音は硬いかな。気になるところですが一応オリジナルを信用して、リレーでB+の遅延回路を入れていますが。
トランス類は、特注と言う形になります。野口トランスに注文3週間くらいかかりました。
また、宍戸氏はケミコンで音色を調整することもありますが日ケミであったので、よかったです。
ブラックゲートですと大変です。
配線は非常に簡単です。ハムバランサーの取り方も独特で、調整も楽です。

3.視聴

灯を入れてみてまずびっくりしたのはSN比のよさです。初段出力管、ドライバー直熱管を使っているにもかかわらず、音が出ていないときはもちろんのこと演奏が終わった後、一気に引くのは圧巻です。(45に特に感じるところですが)
800はドライバーの音を80%程度通すということですが本当にそう感じます。
アンプを作るときはまず作者の意図、視聴記をある程度参考にするのですが、これほど記事通りという事は珍しいです。ここが宍戸氏の記事を信じるきっかけとなったのですが。
アンプは使ったばかりは、評価が甘くなり(特に今までと違う傾向の音になると)しばらく聞き込むと、これは体調、録音の良し悪し、録音時期(40年代より70年代)でどこか破綻のでるときが多かったのですが
このアンプはほとんど出ません。録音の悪さを感じさせません。

4.雑感

大金をつぎ込んで好きな球でいい音を出したいのはあたりまえで、常用にしようと試みるのですが
それによって聴くジャンル、年代が代わってしまうこともありえます。
まあ、アンプに振り回されているのですが、聴く事が目的なのか、作ることが目的なのか
人それぞれなので。
ただいいものを作った後はしばらく作る意欲が衰退するのは確かなような感じがします。

RCA800 シングルアンプ回路図

イントラ反転811Aシングルアンプについて(03/10/10)

1. 811Aの始まりは球の安さから

RCA800シングルアンプを作り、ほぼメインは満足でしたの(費用もかかりました)でその後プリアンプにはまりまして、プリアンプばかりやっていましたが、少ない費用で結構楽しめました。
しばらくすると、メインも作りたくなり、面白そうな球を捜していました。
今もありますが、MJ誌の自作アンプコンテストでたぶん1位だったと思いますが、現在活躍中の
征矢氏がダイレクトカップル方式の811Aシングルアンプの記事を見つけました。
その後ある方が、これも入賞アンプですが、宍戸氏の回路を多少変えまして、入賞しています。
本来、宍戸氏はRCA830Bを入手し、イントラ反転回路を思いついたそうですが、このときに811Aの回路も発表しています。
面白そうな球だなと思いました。VT104(トランスドライブ)もそろそろ作り変えかなと思っていた頃でした。置く場所もなく作ってはしばらく聞きばらしていました。
811A球自体は持っていなかったのですが、ロシアの球が非常に安く(4本、1万円程度)音もそれほど悪くないとのことで、購入しました。パワー管が電圧増幅管程度の価格ですので。

2. 811Aの最初は直結ダイナミックカップル方式

ちょうどその頃、征矢氏が上記入賞アンプの見直しを行い、ローコスト版でより良い811Aの回路を発表しました(出力トランスFX50-3.5SよりFW20S、初段310Aより2C52 S.R.P.Pに変更)
これでやってみようと思いました。FX-20S、MX-175があり、使えそうでしたので。
(実際はイントラ反転で宍戸氏の回路をやりたかったのですが、出力トランスX-3.5S、コストを下げてもXE-60程度は使わなければいけないと思っていました。また、ドライバートランスも必要で持っていたのはNC-15、NC-18で1次が15K程度で2次のほうが高くイントラには使えませんでした。)
源回路は、初段Raythonの2C52でしたが、RCA5691があったのでこれに決めました。
整流はダイオードでした。音自体はいいものを持っているようでしたが、しばらく聞き込んでいくと(初段を5692や6SH7(5結)や、K.NFBをかえたり、いろいろやりましたが2C52はやらなかった。)中域より高域にかけて少々薄く聴き疲れしました。(源回路はよいと思いますが)

3. 811Aイントラ反転に作り変え

このようなもやもや状態の中、サイドワンダーで宍戸氏が、知人が811Aの追試をやり、トランスを小型のものXE-20SかFW-20Sに変え、球もロシアか、中国に変えたところ、300Bも及ばないような記事があり(現在見つかりませんが)、NC-15とNC-10を交換してくれる方がいまして、作り変えました。
宍戸氏自身も、大型トランスを使った音(初回品)には満足していないようでした。
いつものように、シャーシからつくり、今回は色をワンパターンより脱出し、パステルブルーとしました。
RCA800の全段直結と違い、ドライバー管交換がいろいろなものが可能で、好みの音に持っていくのは割合に簡単でした。(当然、ベースとなる音が好みでないとどうしようもありませんが)

4. ドライバー管あれこれ

811Aイントラ反転アンプ(上より)

ALL トランス結合の300Bシングルアンプの時もそうですが、小型出力管の三結をドライバーとして使っていますが傾向は似ています。
試したものは

6K6GT(RCA)
端正な音で、全域が多少薄くなる感じがありますが、バランスよく、刺激音が出ません。

6F6GT(RCA)後期どこかのOEMだと思います。
刺激音は出ませんが、高域が多少ボケる感じです。音像が大きくなる。メタル管で同等の1613(RCA)のほうがしまりが出てよい感じです。

6V6G(マルコーニ)
ちょっと聞くとメリハリ(音圧が上がり)が出ていい感じなのですが、聴いているとやはり、刺激音がたまにでます。疲れます。

6L6WGB(Philips)
これは6L6系も試してみたくて購入したのですがこれはあたりました。バランスよく、力強い低域に、中高音がのった感じで、安定しています。小音でもバランス崩れません。

811Aイントラ反転アンプ(下より)

5.半端でない暑さ

宍戸氏のアンプは、とにかく小さなシャーシに、ヒーター電源の直流化(4A)のためダイオードを使い、又出力管にも電流が多く流れますので(これが特徴でもありますが)電源トランスもかなり目いっぱいな使い方をしています。
いままで作った古典管などは余裕を持った使い方なのでシャーシが暖かくなる等の感覚がありません。
宍戸氏の部品の使い方は、電解コンデンサーなどは掛かる電圧よりわずかに高い程度です。
佐久間氏などの考え方とはまったく反対です。
今までの感覚で作るとなると非常に大きいシャーシとなり電源トランス等非常に大きくなってしまうでしょう。
このようなので夏場は使用をどうしても控え気味になってしまいます。
個人的には、この辺がひとつの課題かなと思います。
800シングルアンプ 配線模様

特別な部品を使用せず、配線材はOFC使用
800のパスコンにB.Gを使用、あとは日ケミ汎用ブロック電解コンを使用。
抵抗はほとんど酸金とカーボン抵抗これほど部品選定が楽なアンプはなかったです。
800 電源部および片ch部

出力管部は50mm穴に10mm落とし込み放熱を良くしているつもりです。また見た目ものっぺりした感じがなく好きです。
ハムバランサーのとり方も独特です。
宍戸式アンプ計画倒れ、手の届かないものに(05/8/17)
ここ5年ほどアンプ作りから遠ざかっていますが、プリアンプに凝っていた頃、宍戸氏が1例だけ(私の知っている限りでは)発表した回路があります。6DJ8を使ったCR型EQ回路のプリアンプですが、「MJ」誌’87.1月、2月に記載され、9月にその後の記事を載せています。筆者の追及心には頭が下がります。
ただこのプリアンプはEQ部のCRのパーツの組合わせ、エージング状態など非常に根気が要る感じがしたので、作ろうと思って作らず仕舞いになってしまいました。
結構、ほかの筆者などは1例作れば、また違う球で製作しフォローの記事はあまり見たことがありません。設計、製作したアンプを聴き込んだ感じがしません。新しい球を見つけては部分、部分を組み合わせている程度にしか思えない筆者もいます。

また、主のメインアンプでは、筆頭に上げられるのはRCA808イントラ反転アンプですが、ドライバーの6GA4を手に入りやすい6L6GCにに交換し、読者が作りやすいように発表していただきましたが、もうトランスなどは手に入らないでしょう。やはり、アンプは勢いで作らないとなかなかできません。
その後、826、838、805と球も211、845級となってきて、私には手が出ないものとなってしまいました。
(単純に費用的にですが)トランスもほとんど特注になってしまいます。(入手は不可能化と思います)
805などは808を超えたと筆者は言っていますが。
筆者もこの世にいませんし、まあ、800と811Aをメンテしながらやっていくつもりです。

今後宍戸式アンプに興味を持ち、作成しようとしている方には、811Aや801Aのアンプを個人的にはお勧めします。球、トランスとも流通しているようなので。コンデンサーなど手に入るか知りませんが。コストもそれほどかからないと思います。
RCA801A イントラ反転アンプ
811Aイントラ反転アンプ
筆者が名機808より良いといっている805シングルアンプ